精神障害の当事者目線で語る、A型作業所の体験談【統合失調症】

精神障がいを抱えながら「A型作業所」に通うようになったわけ

はじめまして、ライターの青いインクと申します。

私は精神障がいの当事者で、10年前に「統合失調症」の診断を受けました。現在は、就労継続支援A型(通称・A型作業所)で在宅ライターとして勤務しています。

今回は、精神障がいをお持ちの方に向けて、A型作業所に通ってみて分かったことや、就労するに至るまでのいきさつをお話ししようと思います。

精神障がいがあって就労が難しい、あるいは、A型作業所がどんなところか興味がある、という方にとって参考になれば幸いです。

「統合失調症」患者だった私が働くようになるま

私が「統合失調症」の診断を受けたのは大学生の頃です。

当時、二十一歳でした。東京の大学へ進学し、初めての上京と慣れない一人暮らしの生活を送っていました。

家庭の事情で両親とは折り合いがわるく、スーパーで夜間清掃のアルバイトをしながら生活費を捻出していました。

朝の9時から講義がはじまって、16時に終わると同時に教室を出て、自転車に飛び乗ってアルバイト先へ向かいます。

アパートへ帰宅するのは23時頃という生活でした。

そうした生活を繰り返すうちに無理がたたって、大学三年時に統合失調症を発症。

被害妄想や幻聴といった症状に苦しめられ、精神科の病棟へ入院することとなります。

失意のどん底で、二十一歳の誕生日を病棟のなかで迎えました。

約五ヶ月に及ぶ入院生活ののちに退院し、大学へ復学。

何とか卒業すると、次に待っていたのが就職の壁でした。

「統合失調症」は、思考がまとまりにくくなったり、言葉が思うように出なくなるなど、主に対人面でつまずきやすい障がいです。

新卒の形で書類選考を受けることはできたのですが、周囲の学生たちとディスカッションをしながら進めるようなグループワークや面接に耐えることができず、正社員としての就職はできませんでした。

その後、障害を隠して契約社員やアルバイトという形で、書店のレジやスーパーの品出しなどを経験しました。

病気を隠した状態で就労することを「クローズ就労」といいますが、病気というハンデがあるなか、健常者と同条件で働くことになるので、障がいのある方にとっては非常にハードルの高い就労方法です。

私の場合は、障がいを「クローズ」にしたまま働くと、二年以上働くことができませんでした。

人前で緊張しやすかったり、疲れやすい性質があることを病気のせいにできず、薬の副作用があっても誰にも相談できないことが辛かったです。

「もうどこにも雇ってもらえるところはないのだろうか?」そんな風に落ち込んでいたときに辿り着いたのが、A型作業所で働くという選択肢でした。

A型作業所で働くという選択肢

「A型作業所」をご存知でない方に簡単に説明すると、病気や障がいによって一般的な就労が困難になっている障がい者の方が利用できる福祉サービスのひとつです。

障がい者手帳をお持ちの方であれば、役所で「障がい福祉サービス受給者証」の交付を受けることで、誰でも利用することができます。

正式名称を「就労継続支援A型」といい、福祉的な就労という位置づけですが、企業と雇用契約を結んで働くので、一般的なアルバイトと同じく、最低賃金が保証されています。

私がA型作業所の求人を見つけたのは、ハローワークのサイトで求人を検索していたときでした。

精神障がいを隠しながら働く「クローズ就労」には限界を感じていて、「障がい者雇用」枠に切り替えて、求人を探しはじめました。

そんな時に見つけたのが、ネット古書店のバックヤード業務を行うA型作業所でした。

私がここに通うことに決めたのにはいくつかの理由があります。

精神障がいがあるなら「時短勤務」からはじめるのがおすすめ

一つ目は、「時短勤務」であったことです。

一般に「統合失調症」などの精神障がい者の方は、フルタイム勤務よりも、短い時間の就労からはじめるのが向いているとされます。

私が通った作業所の勤務時間は、午前9時半〜午後2時半までで、4時間半勤務からのスタートでした。

この「4時間半」という勤務時間は、精神障がいをお持ちの方にとって無理なく働きやすいひとつの目安で、就労を不安に感じている方は、このくらいの時短勤務からはじめてみるのがおすすめです。

「A型作業所」の始業時刻は9時30分〜10時より作業を開始するところも多く、ラッシュタイムの通勤を避けることができるので、薬の副作用のために朝起きるのが辛いという方にも向いています。

業務に慣れてきた頃に、徐々に勤務時間の延長を申し出て、30分ずつ伸ばしていく配慮をしていただき、最終的には9時半〜16時までの5時間半(休憩1時間)で働くことができました。

当時の月収としては8〜10万円前後の給料をいただいていました。

A型作業所を利用するなら興味のある作業・業種に挑戦してみよう

二つ目が、作業内容に興味があったことです。

私は学生の頃から本が好きで、暇さえあれば古本屋や新刊書店に通い詰めて、アパートのなかで読み耽っていました。

昔で言うところの典型的な文学青年で、どんな形でもいいから本に携わる仕事がしたいと考えていたのです。

ネット書店のバックヤードでは、お客様から注文があった商品を棚から抜き出してカートに乗せていく「ピッキング」作業、注文を受けた本やメディア商品をビニール袋や封筒に詰めていく「梱包」作業、配送先の宛先ラベルの印字や、注文商品を重量ごとに分けて、配送業者に引き渡す「出荷」作業などを担当しました。

棚からピッキングしてきた商品が、愛読した本のタイトルであったり、まだ知らなかった本に出会うこともあり、これらの商品をご注文いただいたお客様の元へ届ける仕事だと考えると、とてもやりがいのある仕事だと感じられました。

実際に働くなかで、商品のピッキング・梱包・出荷・出品まで、すべての工程を担当させていただきました。

その経験から、自らネットショップを立ち上げて「古物商許可(書籍商)」を取得し、念願だったネット古書店の個人運営をはじめることができました。

まとめ 精神障がいで就労が不安なら、A型作業所からステップアップ

障がい枠というと、確かに一般よりも求人数は少ない傾向にありますが、一方でこうしたA型作業所のように一般ではなかなか経験できないことを作業として教えていただけることもあるので、障がいがあるからといって悲観的になりすぎる必要はありません。

むしろ、障がい枠が使えることを逆手に取って、こうしたA型作業所をうまく利用しながら、自分のやってみたかったことや興味のある業種に挑戦してみると、思わぬところから道が開けていくこともあります。

A型作業所をひとつのステップにして、就職への準備をしながら、次は障がい者雇用枠に挑戦するということも可能です。

もし精神障がいがあって働くのが難しいと感じるときには、A型作業所で働くという選択肢があるということを、頭の片隅で覚えておいていただけたらと思います。

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青いインク

精神障がいの当事者で、10年前に「統合失調症」を発症。現在は服薬により病状は安定し、在宅ライターとして活動中。通所型・在宅型のA型作業所の利用経験あり。趣味は本を読むこと、書くこと。文学ライター・ブロガーとして独立する道を探っています。お仕事の依頼はランサーズ(ランサーズID:BlueinK)まで。

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